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(つづき)
反面、もの静か―
けれどそれだけに、奥底に大きなエネルギーを圧縮し秘めていそうな子もいる。
そういう子は、きまって僕の眼をちゃんと見たうえで、ごく穏やかに挨拶をしてくれる。
授業を終えたばかりで湯気の立ちそうに顔は上気していても、その眼は、いつもキラキラと澄んでいて、深い。
―吸い込まれるのじゃないか
という一瞬のとまどいからこちらが醒めたときには、もうその子は染み入るような笑顔を残し、あいさつも早々に、さっとその場を去っている。
―なんてすがすがしいんだ。
気になったので、後日あらためて、大勢いる中でのその子に焦点を絞ってみた。
つくりなどは、周りにくらべるとけっして派手ではない。
なのに、その華奢な体をくまどる輪郭というかコントラストというか、そういう枠線が他の子より幾段も濃いように思える。
―何が人と違うんだろう。
まず、無駄に周りとはしゃいでいない。
ひとり黙々と浴衣をたたんでいる(その日のレッスンは殺陣だったらしい)。
そしてそこに、えもいわれぬ清潔感がただよっている。
きっとこれが輪郭の正体なのだと思う。
そういえば挨拶にしても、ある別の子からは感じた阿諛(おもねり)を、その子から感じなかった―無駄がなすぎて寂しいくらいに。(『ある別の子』ごめん)
しかしだからこそ、たった一言の挨拶にこめた心が、澄んだ瞳をとおして直に伝わってくるのだろう。
この清潔さだ。
ひたむきさ、慎ましさ、清潔感。
こういう晴れ晴れとした印象をまとっている子というのは、思いのほか稀なものだ。
(つづく)
【浜野基彦】
反面、もの静か―
けれどそれだけに、奥底に大きなエネルギーを圧縮し秘めていそうな子もいる。
そういう子は、きまって僕の眼をちゃんと見たうえで、ごく穏やかに挨拶をしてくれる。
授業を終えたばかりで湯気の立ちそうに顔は上気していても、その眼は、いつもキラキラと澄んでいて、深い。
―吸い込まれるのじゃないか
という一瞬のとまどいからこちらが醒めたときには、もうその子は染み入るような笑顔を残し、あいさつも早々に、さっとその場を去っている。
―なんてすがすがしいんだ。
気になったので、後日あらためて、大勢いる中でのその子に焦点を絞ってみた。
つくりなどは、周りにくらべるとけっして派手ではない。
なのに、その華奢な体をくまどる輪郭というかコントラストというか、そういう枠線が他の子より幾段も濃いように思える。
―何が人と違うんだろう。
まず、無駄に周りとはしゃいでいない。
ひとり黙々と浴衣をたたんでいる(その日のレッスンは殺陣だったらしい)。
そしてそこに、えもいわれぬ清潔感がただよっている。
きっとこれが輪郭の正体なのだと思う。
そういえば挨拶にしても、ある別の子からは感じた阿諛(おもねり)を、その子から感じなかった―無駄がなすぎて寂しいくらいに。(『ある別の子』ごめん)
しかしだからこそ、たった一言の挨拶にこめた心が、澄んだ瞳をとおして直に伝わってくるのだろう。
この清潔さだ。
ひたむきさ、慎ましさ、清潔感。
こういう晴れ晴れとした印象をまとっている子というのは、思いのほか稀なものだ。
(つづく)
【浜野基彦】
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