名古屋で暮らしていたころよく聞いていた曲を流して、それらを大きな声で歌いながら、部屋の片づけをしていた。
すると、棚の奥からこんなものがコロンと出てきた。
可愛らしい、当時の職場のミニチュアだ。
直径2センチほどのこぢんまりとしたものなのに、細かいところまで実によく作りこまれている。
よく見ると、屋上展望エリアの芝生まで、実物と同じ形で驚きだ。
そういえばここの屋上で、僕は毎朝仕事の前に、やはり大きな声で歌を歌ったものだった。
さて、その仕事がついに最終日を迎えた朝のことである。
その朝も、僕はいつもと同じように屋上に上り大いに歌を歌っていた。
すると自分の歌声に混じって
―誰かが僕の名を呼んでいる
気がした。
いや、確かに誰かが僕の名を呼んでいる。
声は下の方から聞こえてくる。
何だろうと思って、柵から乗り出し地上を見下ろした。
驚いたことに、地上では仲良くしてくれていた女性従業員が2・3人、屋上の僕へ向かって手を振ってくれていた。
―僕の歌声は周囲にまる聞こえだったようだ。
そんなことはともかく、祭りが幕を閉じようという日の朝になって初めて経験したそのできごとは、何だか無性に清々しく、そして心の温まるものだった。
ささやかではあるけれど、祭りの最終日に天が授けてくれた僕だけの記念碑のようなものに思えた。
「おーい」
こういう時に返す言葉のお手本みたいな返事をしながら、僕は彼女たちに精一杯手を振り返した。
手を振るうちに、嬉しくて、少し泣いた。
模型では1センチ弱でも、原寸では、人の眼尻に溜まった涙の粒を確認できるほど、地上と屋上の距離は短くはない。
すると、棚の奥からこんなものがコロンと出てきた。
可愛らしい、当時の職場のミニチュアだ。
直径2センチほどのこぢんまりとしたものなのに、細かいところまで実によく作りこまれている。
よく見ると、屋上展望エリアの芝生まで、実物と同じ形で驚きだ。
そういえばここの屋上で、僕は毎朝仕事の前に、やはり大きな声で歌を歌ったものだった。
さて、その仕事がついに最終日を迎えた朝のことである。
その朝も、僕はいつもと同じように屋上に上り大いに歌を歌っていた。
すると自分の歌声に混じって
―誰かが僕の名を呼んでいる
気がした。
いや、確かに誰かが僕の名を呼んでいる。
声は下の方から聞こえてくる。
何だろうと思って、柵から乗り出し地上を見下ろした。
驚いたことに、地上では仲良くしてくれていた女性従業員が2・3人、屋上の僕へ向かって手を振ってくれていた。
―僕の歌声は周囲にまる聞こえだったようだ。
そんなことはともかく、祭りが幕を閉じようという日の朝になって初めて経験したそのできごとは、何だか無性に清々しく、そして心の温まるものだった。
ささやかではあるけれど、祭りの最終日に天が授けてくれた僕だけの記念碑のようなものに思えた。
「おーい」
こういう時に返す言葉のお手本みたいな返事をしながら、僕は彼女たちに精一杯手を振り返した。
手を振るうちに、嬉しくて、少し泣いた。
模型では1センチ弱でも、原寸では、人の眼尻に溜まった涙の粒を確認できるほど、地上と屋上の距離は短くはない。
そのとき僕が顔をくしゃくしゃにして、ただ笑っていただけではないということは、きっと今でも僕しか知らない。
ふと、そんなできごとを思い出した。
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