−研修生制度
僕の勤務めている劇団にもそういう呼び名の、俳優養成コースがある。
研修生たちは朝早くから稽古場へやって来て賑やかにレッスンに励む。
それが昼過ぎに終わると、稽古場が空になる。
その空いた稽古場に我々劇団員が入れ替わり、公演の稽古が始められるというわけだ。
僕は稽古場へ早めに足を運ぶ。
なので、レッスンを終えたばかりでまだ帰り支度をしている研修生と鉢合わせることが多い。
20人ばかりわらわらといて、僕とすれ違うたびにそれぞれが挨拶をしてくれる。
皆、レッスンをやり終えたばかりで、情熱やエネルギーを体いっぱいに充溢させている。
それをうまくコントロールできない子もいて
「―っはようございますっ!!!」
と突拍子もない爆音で、僕に挨拶を仕掛けてくる―それもきまって背後から。
元気なのは喜ばしいことだが、 三十路過ぎの心臓を破るようなまねをしてはいけない。
そういう間抜けな子も、どこか憎めなくって嫌いではないのだけど。
(つづく)
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