Fool on the 筑紫丘~虹ヶ丘~桜ケ丘

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平成21年8月7日金曜日

劇団の研修生②


(つづき)

反面、もの静か―

けれどそれだけに、奥底に大きなエネルギーを圧縮し秘めていそうな子もいる。

そういう子は、きまって僕の眼をちゃんと見たうえで、ごく穏やかに挨拶をしてくれる。

授業を終えたばかりで湯気の立ちそうに顔は上気していても、その眼は、いつもキラキラと澄んでいて、深い。

―吸い込まれるのじゃないか

という一瞬のとまどいからこちらが醒めたときには、もうその子は染み入るような笑顔を残し、あいさつも早々に、さっとその場を去っている。

―なんてすがすがしいんだ。


気になったので、後日あらためて、大勢いる中でのその子に焦点を絞ってみた。

つくりなどは、周りにくらべるとけっして派手ではない。

なのに、その華奢な体をくまどる輪郭というかコントラストというか、そういう枠線が他の子より幾段も濃いように思える。


―何が人と違うんだろう。


まず、無駄に周りとはしゃいでいない。

ひとり黙々と浴衣をたたんでいる(その日のレッスンは殺陣だったらしい)。

そしてそこに、えもいわれぬ清潔感がただよっている。

きっとこれが輪郭の正体なのだと思う。

そういえば挨拶にしても、ある別の子からは感じた阿諛(おもねり)を、その子から感じなかった―無駄がなすぎて寂しいくらいに。(『ある別の子』ごめん)

しかしだからこそ、たった一言の挨拶にこめた心が、澄んだ瞳をとおして直に伝わってくるのだろう。

この清潔さだ。


ひたむきさ、慎ましさ、清潔感。


こういう晴れ晴れとした印象をまとっている子というのは、思いのほか稀なものだ。


(つづく)





【浜野基彦】

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