「ぼんぼりワルツ」
しっかりと身を入れることのできたとても幸せな仕事だった。
けれど必ず終わりはくる。
終わりがきてしまえば、その後の僕は、入れ得た身の分まるまるまるで抜け殻だ。
その抜け殻へ代わりになだれ込んでくるのは、反省に後悔に汗顔に赤面に自己への懐疑に行く末の不安に……
黒くてイビツで後ろ向きな気持ちばかり。
もうほとほといやになってしまう。
ところがこの抜け殻期間中、わが六尺の体いっぱいにたくわえた、その情ケナサやショゲカエリやムナシミやハジイリども −
それらこそが、いつしか勝手に発酵し醸され、次の作品に入れるための立派な「身」になってしまうのだからわからない。
−などと「我がダンディズム」がましい文章をつづりかけたけど、この晴れた一日、山に登り海を臨み飯を腹一杯食べたら、つづったような青臭い思いなどどこかへ飛んでいってしまった。
あとよく眠れば −
よし、俺は健康だ。
また次の仕事に向けてのんびりこつこつやるぞ。
元気がわいてきた。
よし!やるんだぞ、俺よ。
【浜野基彦】
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