現代の我々が活字で文章をしたためようとすれば、使うのはもっぱらパソコンです。
ですから、ふだん扱い慣れないタイプライターを、小道具として使いこなすにはなかなか骨が折れるのです。
キーボードの配列が受け継がれているとはいえ、紙をはさんだり、「チーン♪」で「ガチャン」と改行したり、頭になんとなくのイメージはあるのだけど、いざやるとなると知らない手順だらけです。
この日、映画監督ヴィクターの後藤敦は、
−書き上がった原稿をタイプライターからシュッと引き抜く
という所作が、どうにもうまくいかず、紙をビリッと繰り返し破いてしまいました。
原因は引き抜く方向を間違えていた、というだけなのですが、やはり慣れない道具は始末が悪い。
作家ベンヘクトの多田野に負けじと、ヴィクター後藤も、猛烈な勢いでタイプライターの稽古を始めたのでした。
ガチャ、ガチャ、ガチャ、チーン♪
【浜野基彦】
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