彼女が本日はまったツボは、元帥・沢りつおの言い間違いでした。
「クリューク」と「ガレーン」というそれぞれの登場人物の名がこんがらったあげく、沢の口から跳び出したのは「クル〜ン」という何とも間の抜けた名前。
小野寺は突然現れた「クル〜ン」なる新たな登場人物の様子をついつい妄想してしまい、笑いが止まらなくなります。
しかし本筋の稽古は続いています。
小野寺は自分の笑い声で稽古を中断させてはいけないと、上手(かみて)の袖に隠れて必死に笑いをかみ殺します。
−が、小野寺亜希子は知りません。
この壁の一枚向こうでは言い間違いを起こした沢りつお本人が、こみ上げる笑いと大格闘中で、どのみち稽古は中断されているということを。
実は沢りつおも小野寺に負けずおとらずの、笑いのツボから抜け出しにくい同類の大先輩なのでした。
【浜野基彦】
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