そうこうするうちに予約の時間が迫ってくる。
体は冷えているのに、あぶら汗がにじみ始めた。
汗は次第に滝のようになって、毛穴という毛穴から流れだす。
そしてその汗が、凍えた体をいっそう冷やしてゆく。
尿意はさらにましてゆく。
しかし、探せども探せども、手洗いはどこにも見つからない。
―ここにもない。
―ここにもない。
―ここにもない。
―ここにもない。
―どこにもない
―どこにもない
―手洗いはどこにもない
―手洗いはどこにもない
―!!!
―と、そこで目が覚めた。
寝汗でびしょ濡れの体。
そしてぱんぱんに膨れ上がった下腹部。
這うようにして(じっさい這った)トイレへゆき、恍惚として用を足しながら、僕はつぶやいた。
「ああ、名古屋とちがう、うちや、渋谷や」
あたかも持病が、思いもしない時を狙って再発を繰り返すように、ふとした時に狂おしいほど、名古屋の町が恋しくなる。
もう二年も前。
僕は名古屋に住んだことがある。
大好きな町だったから、ずいぶん長いあいだいた気がする。
けれど実際数えてみれば、そこでの暮らしは1月から10月―結局1年にも満たなかった。
だから大好きな町なのに、ぼくはその町でクリスマスを迎えたことがない。
絞れるほどに汗を吸った下着を取り換え、僕はまた床に就いた。
どうやら寝てる間に発熱したらしい。
時計を見ると夜の11時だ。
風邪薬を飲んだのが、たしか昼の3時頃だった。
僕は8時間も眠っていたのか。
クリスマス・イヴ、ひとりきり、重い風邪をひき、馬鹿げた夢を見て、熱にうなされ、俺は、俺は―。
―俺は
腹が減った。
まずは何か食べないと。
―スパゲッティが食べたい。
皿に大盛りのスパゲッティが食べたい。
イタリア村の港を臨むレストランで、山盛りのスパゲッティを、今、俺は、腹いっぱいに食べたい。
ひと眠りしたら、食欲もわいてきたみたい。
どうやら峠は越したようだ。
僕の、夢のクリスマス・イヴは、だいたいこんなだ。
【おわり】
※写真は、改源かぜ薬、眠る前に読んでいた本(なのになぜ名古屋)、プレゼントにもらったカフス 、そしてものすごい量の汗がしみこんだクッション
※そしてこの一連のばか話は、熱のせいで朦朧と妄想した草々を、手慰みにつづっただけの、まったくの作りごと―言わずもがなですが。
さて、皆さんは、どんなクリスマスイヴをお過ごしなのでしょうか?
体は冷えているのに、あぶら汗がにじみ始めた。
汗は次第に滝のようになって、毛穴という毛穴から流れだす。
そしてその汗が、凍えた体をいっそう冷やしてゆく。
尿意はさらにましてゆく。
しかし、探せども探せども、手洗いはどこにも見つからない。
―ここにもない。
―ここにもない。
―ここにもない。
―ここにもない。
―どこにもない
―どこにもない
―手洗いはどこにもない
―手洗いはどこにもない
―!!!
―と、そこで目が覚めた。
寝汗でびしょ濡れの体。
そしてぱんぱんに膨れ上がった下腹部。
這うようにして(じっさい這った)トイレへゆき、恍惚として用を足しながら、僕はつぶやいた。
「ああ、名古屋とちがう、うちや、渋谷や」
あたかも持病が、思いもしない時を狙って再発を繰り返すように、ふとした時に狂おしいほど、名古屋の町が恋しくなる。
もう二年も前。
僕は名古屋に住んだことがある。
大好きな町だったから、ずいぶん長いあいだいた気がする。
けれど実際数えてみれば、そこでの暮らしは1月から10月―結局1年にも満たなかった。
だから大好きな町なのに、ぼくはその町でクリスマスを迎えたことがない。
絞れるほどに汗を吸った下着を取り換え、僕はまた床に就いた。
どうやら寝てる間に発熱したらしい。
時計を見ると夜の11時だ。
風邪薬を飲んだのが、たしか昼の3時頃だった。
僕は8時間も眠っていたのか。
クリスマス・イヴ、ひとりきり、重い風邪をひき、馬鹿げた夢を見て、熱にうなされ、俺は、俺は―。
―俺は
腹が減った。
まずは何か食べないと。
―スパゲッティが食べたい。
皿に大盛りのスパゲッティが食べたい。
イタリア村の港を臨むレストランで、山盛りのスパゲッティを、今、俺は、腹いっぱいに食べたい。
ひと眠りしたら、食欲もわいてきたみたい。
どうやら峠は越したようだ。
僕の、夢のクリスマス・イヴは、だいたいこんなだ。
【おわり】
※写真は、改源かぜ薬、眠る前に読んでいた本(なのになぜ名古屋)、プレゼントにもらったカフス 、そしてものすごい量の汗がしみこんだクッション
※そしてこの一連のばか話は、熱のせいで朦朧と妄想した草々を、手慰みにつづっただけの、まったくの作りごと―言わずもがなですが。
さて、皆さんは、どんなクリスマスイヴをお過ごしなのでしょうか?
7 件のコメント:
げげっ!風邪重そうじゃないですか??お大事に。
小説か!?と思って読んでました(^_^)
⇒葉月さん
―たまにはこんなのもアリかな?
などと書き始めたら、病気している時の妄想というのは、とめどなく膨らむものなんですね…
しかし、妄想は妄想。
結局はあまりにもバカバカしく、しかも、もっとも好ましくない「夢オチ」。
にもかかわらず、追っていただけたみたいで、汗顔の限りです。
熱を出したおかげで、かえって体調ももとに戻ってきたようです。
明後日には福岡に帰らねばならないので、ゆっくり休んでおります。
いつも温かいコメントをくださって、ありがとうございます。
かぜ・・・大丈夫ですか??
大変なクリスマスイブになってしまいましたネ。
それにしても・・・熱にうなされた後のこの長文・・・すごいです!
なんだかとってもイタリア村に(今年は何回か行ったけれど)行きたくなってきました!
福岡でゆっくりして来て下さいネ!
⇒BOKE将軍さん
実はですね、この話には、元ネタのようなものがありまして。
それは、何を隠そう、将軍&つっきーのお出かけ日記なのです。
拝見するたび、クリスマスに彩られた名古屋を思い描いて、ひとり浮かれた気持ちになっていました。
そこにちょうど風邪をこじらせ寝込んだものですから、あんな夢ばかり見たのかもしれませんね(笑)
でも目がさめるまでは、すいぶん幸せだった記憶がありますから、おかげ様で何だか得した気持ちです。
つっきーも将軍も、名古屋クリスマス、楽しんでいらっしゃいますか?
イタリア村でクリスマス、いつか叶えてみたい夢であります。
面白すぎです(^_^;)笑いました。こんなリアルな長い夢が見られるなんてすごいですね。
ぜひいつかのイヴに名古屋にいらしてください。この夢の通りのイヴを私かウチの娘となら過ごしていただけます。(って、それじゃ「若い二人」の部分が不一致でしょ?!)
ウチの娘には「好きな人リスト」というのがあって、日々更新されているのですが、浜野さんは2年経った今も、リストのかなり上位に存在しています。「出会って2年」の所は条件ぴったりですね~(ToT)/~~~
早く風邪治してくださいね。
⇒ミニコージ母さん
「好きな人リスト」上位なんて!
光栄にあまりあります。
そして名古屋の町を、大コージとミニコージが足並み揃えて歩く、なんて。
また妄想が発熱して、別パターンの素適な悪夢を見てしまいそうです。
ミニコージやそのお母様の「イヴ」のお相手が僕では、勿体のうございますから、是非とも平日に―イタリア村でもモリコロパークでも(両者とおすぎか)。
いつも気にかけてくださってありがとうございます。
おかげさまで体の調子もだいぶよろしいです。
また近いうちに愛知にお邪魔したいものです。
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